芦屋川左岸堆積体

1995 -

(計画案)

仁川、夙川、芦屋川、住吉川、石屋川といくつもの天井川を越えて、西へ西へと理由もなく自転車のペダルをこいだ。見慣れた風景は壊れていても、残された土手をひとつ越えるたびに、肉体の苦痛と同時に安らぎに似た感覚があった。地震で六甲山は13cm高くなったという。天井川も造山運動の遠い結果だ。震災や水害という避けようのない自然災害の上で生きてきた私たちの歴史を、地形という形で伝えられないものか。芦屋市内で発生した瓦礫のうちコンクリート、土といった安定した材料の全量を、芦屋川左岸沿いに2.5kmにわたって積み上げ、六甲山から海へと連なる抑揚のある土手状の地形をつくろうと考えた。一般に自然災害の経験は、ただ防災機能の強化へと向かい、結局は忘却されてしまうことが多い。これはそういった負の記憶に地形という具体的な形態を与えることで、日常の身体性や風景の中に顕在化させる試みである。

計画地 兵庫県芦屋市
用途 医療、教育、娯楽、防災、交通など環境の諸相を重層的に備えた震災および水害のメモリアル
面積 21ha
総延長 2.5㎞