tooth

2013 -


東京近郊に開業した歯科医院である。医院とは本来半公共的な施設であるが、ここでは「自前の公共性」という考え方に基づき、交差点に面した医院の1階部分が、私有地でありながらもある種の公共性を帯びたスペースになり得るのではないかと考えた。敷地一杯に張り出した診療スペースのボリュームを持ち上げるように、1階のRC構造体を敷地奥に向かって鋭角的に絞り込んでいる。こうして交差点に向かって大きく開放されたピロティをつくったところ、全体のフォルムが偶然、大臼歯に似ることになった。ピロティの本来の用途は駐車スペースであるが、ちょうど横断歩道の延長上でもあり、時にはささやかな近道や、雨宿り場所となって近隣住民にも親しみやすい歯科医院となることを期待している。ピロティの背後に、休憩室や院長室などをひっそりと配置している。
診療スペースとなる2階は1階と対称的に、曲げて強度を増した6㎜厚鋼板を構造体として用いて、ワンルーム空間を流動的に間仕切っている。四周に設けたテラスはステンレスメッシュで覆われた半屋外空間であり、診療スペースに対するバッファーとなって外部からの視線や日照を柔らかく遮り、同時に内部空間に広がりを与える。コーナー部に設けた3つの診療室は、天井高、テラスの奥行、日照などとの関係によってそれぞれ微妙に異なる雰囲気となるようにデザインしている。ユニット台はいずれも開放的なコーナーウィンドーに向かって配置しており、季節の良い時期には窓を開けば、緑に囲まれたオープンエアーな診療室が出現する。

所在地 東京都日野市
用途 歯科医院
竣工年 2013年
延床面積 141m2
構造/規模 RC造、鉄板造 / 地上2階