福島第一原発神社

2012 -

 

 8階の展示室には『福島第一原発神社』を置いた。原子炉建屋にアイコンとなる和風屋根を載せ、神社ないしは廟として丁重に祀るというプロジェクトの模型である。誰に頼まれた訳でもないが震災直後、その思い付きは私にとって希望であり救いであった。とにかく私自身が一番安心することが出来た。このプロジェクトの目的は、今後1万年以上にわたって溶融燃料を含む高レベル放射性廃棄物を現状のまま水棺化して安全に保管することにある。なぜなら200トン近い溶融燃料をすべて回収することも、廃炉にともない発生する大量の高レベル放射性廃棄物を場外搬出することも事実上不可能だからである。その時(つまり廃炉を諦めた時という意味だが、、)最も重要なことは「それ」が危険であるということを明示し続けることである。しかも、文化や言語さえも変わっているであろう1万年以上後の人類(それは日本人なのか?)に対してである。
 危険なものを危険であると知らしめることもまた建築の大切な役割である。建屋は、建築でさえなかった。ここではその役割を巨大な和風屋根に託している。2〜4号機建屋には向拝付き入母屋屋根を、一回り小型の原子炉を内蔵する1号機には向拝のない屋根を載せる。2〜4号機大屋根の寸法はおよそ、間口方向82m、奥行方向75m、高さは88mになる。4棟それぞれが東大寺大仏殿に匹敵する規模である。芸文センターの模型に同じ大屋根を載せてみたので(『福島第一さかえ原発神社』)、その大きさを感じ取ってほしい。ちなみに、この芸文センターに原発神社大屋根を載せるという実験によって、『福島第一さかえ原発』のアイデアが生まれたという通常とは逆の思考の経緯について付け加えておきたい。その意味で、大屋根は福島第一を栄に転送するための定規の役割を果たしている。

 

 

開催地 あいちトリエンナーレ2013/愛知芸術文化センター(愛知県名古屋市)
用途 インスタレーション
制作年/開催年 2012/2013
素材/技法 スチレンボード、スチレンペーパー、スタイロフォーム、ひのき、バルサ、コルク、プラ棒、突版シート