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2009 -

<庭付き一戸建て住宅>
2階レベルに位置する「庭」と呼ぶ屋外スペースを、二世帯住宅が上下からサンドイッチする構成の「庭付き一戸建て住宅」である。基壇となる2階床スラブまでをRC造で立ち上げ、その上空にツーバイ材でと構造用合板つくった木造ボックスを浮かせている。基壇は親世帯の住居であり、木造ボックスは子世帯の住居である。「庭」レベルに位置するわずかな内部空間にはDKが納まっているが、感覚的には「庭」の延長として外部と同じ素材を引き込んで仕上げており、実際にも土間空間のように使われている。

<ぼやけた借景>
2階床スラブと3階ヴォリュームの投影面をあえてずらして配置したことが、この住宅の最大の特徴である。実際にヴォリュームスタディの大半はその「ずれ方」に向けられた。防球ネットに覆われた「庭」は当初、限られた敷地のなかで野球少年のための練習場を確保するためのアイデアとしてスタートした。それが2階床スラブと3階ヴォリュームの投影面をうまく調整することによって、時には木陰のような食事スペースとなることに、ある時気づいた。一方で雨掛かりは花壇となり、軒下には物干場を確保することが出来る。さらには中途半端な床の余りは室外機置場として利用してしまおう。スカートのように広がった防球ネットは球速を効果的に削ぐと同時に、スラブの先端に人を寄せ付けないことで手摺以上に転落防止には役立つ。ヴォリュームのずれは、これからきっとより豊かな使われ方のグラデーションを誘発するのではないかと期待している。
「庭」を床・壁・天井ともに白く仕上げたのは、上下階のヴォリュームとの図地を反転させ、より露出感の高いスペースとなることを意図したものである。道路を挟んで東側に広がる三角形の大きな空地を抱き込んで、水平に大阪湾まで延びる気持ちよいオープンスペースが出来上がった。夕景においてこの反転感はより顕著になる。
偏心したロトンダのような放散的なプランニングと、敷地東側以外は建て詰まった周辺環境との距離の取り方は、本来は間違った配置かもしれない。しかしおそらくは防球ネットの効果によって、雑多な中景とはすぐにピントが合わなくて、不思議な開放感と、同時に隣家との間のスペースを濾し取ったようなお徳感がある。

所在地 兵庫県宝塚市
用途 専用住宅
竣工年 2009
延床面積 129m2
構造/規模 木造、RC造 / 地上3階