香林寺改修Ⅱ期-タカラブネ-

2015 -

(計画案)

この春に改修工事が完成した仏教寺院の第Ⅱ期計画である。第Ⅰ期では元々は中華料理店であった1階本堂の改修に加えて、山門として機能する新しいファサードをパンチング加工したコールテン鋼板によって付加して、都市型寺院として印象的で親しみやすい外観を整えた。第Ⅱ期においては中華料理店の社員寮として利用されていた2階を大規模に改修して、住宅(庫裏)へとコンバージョンする計画である。甲州街道に面した広いリビングルームは法事のためのスペースとして開放することを想定したものである。リビングルームの背後には、奥行きの深い敷地形状に合わせて中庭を挟みながら5つの個室と2つの水回りを並べている。個室はそれぞれ屋上にペントハウス状に飛び出した大きなハイサイドライトと屋上への専用階段を持つ。また床に開閉可能なインナートップライトを設けることによって、必要に応じて個室自体が1階本堂に光と風を導く環境調整装置として機能する。屋上に挿入された”blade”と呼ぶ曲面により構成されたペントハウス群は、隣接する高層マンションからの見下ろしや富士山への眺望等、周辺環境に対応してそれぞれ微妙に異なるデザインを持つ。”blade”はファサードに合わせて図像をパンチングで刻印したコールテン鋼板で仕上げる予定である。細長い屋上にペントハウス群がところ狭しと寄り添う様は、まるで宝船に乗った七福神のように感じられる。屋上庭園は基本的には住職家族のための私的なスペースとして計画したものであるが、禅寺らしく日本庭園を整備し、正月には市民に七福神巡りを楽しんでもらうことも考えている。

所在地 東京都八王子市
用途 仏教寺院
延床面積 364m2
構造 S造

photos by Yoshiro Masuda