上州富岡駅舎設計提案競技応募案

2011 -

世界遺産富岡製糸場の玄関口となる駅舎コンペの応募案である。環境に軽やかに反応して見え方が多様に変化する「うつろう屋根」を提案した。ゲート状の屋根は、光、風、雨、音といった外部環境とアクティビティを映し出すインタラクティブなリフレクターとなって、四季や1日のうちでの微妙な変化を捉える。風景はかすかに揚げ裏に映り込み、自然光は反射や回折を繰り返して柔らかく室内に届けられる。夜には逆に、揚げ裏全体が間接照明となって周辺を優しく照らし出す。さらには、屋根全体が大きなガーゴイルとなって雨水は両妻面に集められ、中水として再利用される。
構造的には、ダクタル(超高強度繊維補強コンクリート)を用いた薄肉シェルによって、大スパンの軽快なキャノピーを実現する。レンガと同じ窯業製品であるダクタルは、木骨レンガ造の富岡製糸場へのオマージュであり、切妻の無柱空間は同じく製糸場屋根のトラス構造へのオマージュとなる。イカ頭巾を横に大きく引き延ばしたようなフォルムは、応力分布図を形態化したものであり力学的合理性を持っている。ダクタルは躯体防水が可能であり、打放しのままで完全メインテナンスフリーを実現する。しなやかで、強い構造体である。

計画地 群馬県富岡市
用途 駅舎
延床面積 750m2
構造/規模 超高強度繊維補強コンクリート / 地上1階