第6回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展 日本館床のためのインスタレーション

阪神大震災の瓦礫20数トンを実際に現地に輸送し、それを15名の若いボランティアたちとともに日本館の床一面に積み上げて廃墟のインスタレーションを制作した。
共同出展者の写真家宮本隆司は、延べ420㎡におよぶ震災の記録写真で展示室の壁面を埋め尽くし、建築家石山修武のチームは瓦礫の海のなかに異形のロボット10数体を据えた。人選はコミッショナーである磯崎新によるものだ。かつて「未来都市は廃墟である」と不吉な予言めいた警句を発した磯崎のもとに、廃墟というキーワードをめぐって3人の作家が呼び集められたということだろうか。
記録に残らない出来事は、コトの大小にかかわらず歴史とは呼ばれない。未曾有の都市災害の実例として、なんとしてもそれを「あったコト」にしなければならないと私たちは考えた。ヴェネチア・ビエンナーレという国際的なお祭りの場を借りて、大地震という事実を改めて書き起こすこと、廃墟というもうひとつの現実を造り出し、震災を記述し直すこと、それが3人の作家に与えられた使命であるように思われた。

開催地 ヴェネチア・ビエンナーレ日本館(イタリア・ヴェニス・ジャルディーニ公園)
用途 インスタレーション
開催年 1996年
延床面積 256㎡

傘の華

開催地 JICA兵庫南側国際交流広場(神戸市)
用途 仮設テント
開催年 2008年
構造 ビニール傘、ビニール紐
規模 地上1階

湊町アンダーグラウンドプロジェクト


このプロジェクトは大阪市の中心部JR難波駅近くに眠る「なにわトンネル」と名付けられた手つかずの巨大地下空間を利用したアートイベントである。「なにわトンネル」はパースペクティブがついた全長190mの細長い空間で、幅は25mから9mまで変化する。周囲の開発が進めば地下通路などに利用される計画であったが、実際には直下を走る鉄道トンネル建設のために立体的に生じたヘタ地として10年近く使われず、いわば「封印」された状態であった。偶然この空間の存在を知り、アーティストたちと協働して光によって場所を「覚醒」させる展示とその会場構成を行なった。高橋匡太は1232本の蛍光灯をパースペクティブの焦点に置いて圧倒的な光をつくり、映像ユニット“remo seasaw”と宮本のチームは床・壁・天井・柱・梁に対して区別なく均質で無意味な映像を壁紙のように使ったプロジェクションを行った。歪んだ空間を意識化する試みである。

計画地 大阪市浪速区
開催年 2003年
共同出品作家 高橋匡太
久保田テツ
“seesaw”