「ゼンカイ」ハウス

1996 -


震災で「全壊」の判定を受けた今年で101年になる自宅の修復である。震災後速やかに受け付けが開始された公費解体制度は、公費修繕制度というオルタナティブが同時に用意されなかったために、事実上の解体指導として機能し、結果としてみれば、修繕という被災地において最も経済的で速効性のある住宅確保の方法を諦めさせ、仮設住宅の大量建設とメーカーハウスの林立という現象を引き起こすための力として作用した。震災直後の混乱の中で、「全壊」の認定が半ば自動的に公費解体を意味した、という図式に対して、建築家として実際の修復計画を通じて異議を申し立てたいと考えた。特に文化財的価値を持つものでなくとも、建築は常に記憶の器としての側面を持つはずである。
そこで、既存の木造部分はそのままに、鉄骨で新たな柱梁を組んで本格的な補強を施し、自宅を含む長屋全体としての耐震性の向上を図ることを計画した。何とか生活の支障にならないスペースを見つけて鉄骨フレームを通し、木造軸組を各所で安定した新しい鉄骨フレームに緊結することで、徐々にその荷重を鉄骨に預け替えてゆこうという試みである。木造軸組はいずれ構造体としての役目を終え、住まい手と震災の記憶をとどめた「造作」となって生き続けることになる。

所在地 兵庫県宝塚市
用途 アトリエ
延床面積 89m2
構造/規模 木造、S造/地上2階