南芦屋浜団地コミュニティ&アート計画 “Sacrificatio”

1998 -


 阪神大震災の被災者向けに芦屋沖の埋立地に建設された公営住宅団地のなかに、古い防潮堤に姿を借りた、海岸線の遺跡のような構造物をつくった。6つの住棟とその間の中庭を貫いて、約400mにわたって断続する無機質なコンクリートの塊は、新しい居住者にとって生活の背景となることを願ったものである。歴史的文脈を持たない平板な新しい埋立地に、土地のさまざまな時間を、震災や水害といった負の記憶も含めて、あらかじめ内包しようという意図である。
 海水面から正しい高さにある新しい「防潮堤」は、消えた海岸線と海面を可視化して、そこがかつて海であったことを想起させる。雁行する「防潮堤」の配置は、幾重にも重なった山ひだを映し取って、背後にある六甲山の気配を増幅する。皮肉にもそれは、阪神大震災を引き起こした活断層と平行することを意味する。
 都市の記憶は重層的である。ペテルスブルク、ヴェニスといった歴史的な人工都市と同じく、芦屋の埋立地もまたポジティブな意味において、海岸線や海面の「犠牲」の上に獲得されている。

所在地 兵庫県芦屋市
竣工年 1998
用途 モニュメント
敷地面積 42,000m2
施工面積 4,234m2
構造/規模 RC造/全長約400m