S。H。

2003 -


郊外型のSOHOである。敷地は昭和20年代後半に開発された丘の上の閑静な住宅地の中にある。クライアントは、それぞれ別の大学に所属する言語学者のご夫妻である。「S。H。」というネーミングはご夫妻のニックネームにちなんだものである。仕事柄、床面積の約30%をご夫妻共有の研究スペースが占めることになったが、書斎というには余りに広すぎる面積である。そこで研究スペースに加え、エントランスホールと応接間としての機能をも合わせ持った「ラボ」と呼ぶ土間状の空間を、最下階に設けることにした。実際にはDKもラボに連続して同じ領域に含まれており、ダイニングテーブルはゼミテーブルと等価に扱われる。
家全体の構成としては、上下2段になった敷地の高低差をよりどころにしてスキップフロアが5層重ねられている。空気的に見れば大きな一室空間であるが、階を上がるにつれてプライバシーの度合いが高まり、次第に寛いだ雰囲気になるように計画している。したがって一室空間全体を同時に見通すアングルは存在しない。視線はラボ⇔DK⇔リビング⇔寝室⇔ロフトと反射をくり返しながら上昇下降していく。プライバシーの勾配に対応するように全部で4つある階段は上部ほど傾斜が緩い。比較的プライバシーの高い空間を収める白いボックスは周辺環境への配慮と内部からの要請に応じて必要な開口が開けられ、そのまま5本の銅管柱で空中に持ち上げられてその下がラボとなる。
研究と生活のためには、たくさんの棚と収納が必要である。北壁の室内側全面がさまざまな用途に応じた収納壁となっており、生活の背景となる一枚の連続するインテリアとして上下階をつなぐとともに、ブックエンドもある間仕切りのフラットバーは同時に主要な構造体として機能している。北壁の外壁側はやはり構造的な意味合いから折板を水平に流しているが、一部をFRP折板に置き換えることで収納壁にスリット状の明り取りを設けている。

所在地 兵庫県宝塚市
用途 SOHO付住宅
竣工年 2003
延床面積 104m2
構造/規模 S造、一部RC造/地上2階