Open-Air Kindergarten

1992 -


この幼稚園は、六甲山の麓に広がる住宅地の中にある。園庭の先端が水路に向かって岬状に張り出し、背後の雑木林が覆いかぶさるように繁っている。ここに幼稚園の創立40周年の記念館が計画された。具体的な用途としては当面、遊戯室や図書館としての利用が主であるが、将来的には児童数の減少に伴い幼児教育センターや子供文庫として園庭とともに地域に開放していくことが想定されている。
このような立地や与条件に対して何よりもこの施設自体が園庭に散らばる他の遊具群と同じように、ある種空間体験的な意味で道具と呼べるような機能を帯びることを考えた。建具はすべて開放状態をもって常態とする。特にガススプリングによって柔らかくもち上げられた跳ね上げ戸は、あえて子供だけがそのまま飛び込んでこられる高さに設定されており、園庭との間にシャワーのようなごくごく緩いフィルターとして介在している。跳ね上げ戸は片持ち屋根と共に全体として大きなキャノピーを形成している。その下では床に座り込んで絵本を読んでいる子供の傍らを別の子供が園庭の延長のように走り抜けていく。いっぽうで地上部分の開放性を確保するために、やや閉鎖的なヴォリュームについては、古い石積みの擁壁を正確にカットし、そこに嵌め込むようにして地下に埋めている。それは、「母の会」の部屋として地域の子育て相談や編み物教室といったプライベートな集まりに対応したスペースとなっている。
園庭の同じ場所にはかつてあずまやがあったと記憶している。四隅の柱と屋根だけからなる吹き放ちの建物、すなわち四阿であった。それはある意味で架構によって空間を可視化させる道具(遊具)であったと今にして思う。それに対して今回つくろうと試みたのは、内外を仕切るいかなる柱、方立ての類を排除したうえで園庭とはエアカーテンのように仕切られ、キャノピーだけがその場にふわっと空間を立ち上がらせるような、そんな架構に存在しない「あずまや」である。柱を奥にずらすことで戸外の流動性をそのまま室内に引き込むことを意図したのである。
この幼稚園ではそもそも既存の園舎自体が、園庭に面した開放廊下や濡れ縁によってのみ保育室が相互に連絡するというopen-airな空間構成をもっており、それが園全体を見渡したときの園児の動きを特徴づけていたといえる。今回この「あずまや」を加えることで園児がさらにopen-airに動きまわり、園が全体として活性化されることが期待される。

所在地 兵庫県宝塚市
用途 幼稚園
竣工年 1992
延床面積 72m2
構造 S造、RC造
規模 地下1階、地上1階