新富弘美術館建設国際設計競技

2002 -


この場所にしか建てられない美術館をつくろうと考えた。スキー場のように、リフト(ムービングウォーク)で斜面を機械的に登って、地形に導かれて徒歩で自然に下る。整地した林道状の路盤に軽量で簡易な木造平屋のシェルターを架け渡して、外の風景と一体化した細長いスペースを常設展示室とする。擁壁を展示壁として利用することで、林道という単純なルールが多様な場所とシークエンスをつくりだす。地形が緊張と弛緩のメリハリを自然に導く。つまり、急斜面には高い擁壁が発生する。それを展示壁として利用する。一方、緩斜面では擁壁は低くなり、その結果現れる開放的な空間は、レストスペースあるいは繋ぎの空間として利用する。作品年譜に沿った年代順の展示、風景の変化、スロープ斜度の連続的な逓減(1/16→1/21)、展示壁の高さの変化、左右反転などにより、下るにしたがって鑑賞者の場所と時間の感覚が身体的に変化していく。障害を負った富弘さんがはじめて気づいたように、気づきにくいけれども既にそこにあった環境の諸相を読むための補助線のような建築である。

計画地 群馬県吾妻郡東村(現みどり市)
用途 美術館
延床面積 3,148m2
構造/規模 木造、RC造、S造/地下1階、地上4階