N’dam

2010 -

(計画案)

斜面と言うより、崖と言った方がよいだろう。その「崖」の上に建つ母屋と前面道路との隙間に、小さな集合住宅を建設するというプロジェクトである。
崖の垂線方向には、土圧と釣り合うように「もたれ式擁壁」が有利であると考えた。仮設のアースアンカーで切土面を抑えながら上部から下部へと順次掘削を進め、改めて下部からコンクリートを打ち上げていくことになる。一方で、間口を広く取り道路レベルで十分な駐車スペースを確保するためには、左右両側の擁壁は垂直に立ち上げたい。そこで、崖の等高線方向には「逆L型擁壁」を採用し、底版と合わせてコの字型の断面形としている。このようして現れた2種類の擁壁を水平方向にもアーチ効果を持たせるようにスムースに連続させていくと、結果的にその全体像は、水の代わりに満々と「土」を貯えたアーチ式ダムの趣きとなる。非対称の地勢を素直に反映して、アーチは微妙に歪んでいる。
建築の敷地をつくるために通常は雛壇造成が行われるが、それと同じようにここでは「アーチ式ダム」が敷地となる。しかしコの字型擁壁の方は、それだけでは十分には土圧に抵抗し切れない。そこで「切梁」としての建築がはじめて登場してくる。2枚のボイドスラブが切梁として働く。そもそも崖に建築をつくるために土木(=擁壁)が招請された訳だが、その土木を支えるために、本来の目的である建築の側も当然のように土木に協力する。ここでは建築と土木が文字通り共生している。

所在地 兵庫県西宮市
用途 集合住宅
延床面積 344m2
構造/規模 RC造  / 地下1階、地上5階