御船町甘木・玉虫仮設団地 みんなの家

2017 -

熊本地震の被災地に計画された2軒のみんなの家である。常設型としてRC造の基礎を持つ。大きな軒下と四周をめぐる広い縁側を持ち、鍵が掛かっていても住民の皆さんが気軽に立ち寄り、座って話ができることが最大の特徴である。切妻というみんなの家に共通するデザインコードを用いながらも、勾配を強くして軒を低く抑え、屋根を一本足の棟持ち柱で支えることで、親しみやすい「傘の字」を仮設団地に差し掛けている。
最小限の室内空間を包む外壁は、周辺の風景とのなじみを考えた左官仕上げとしている。熊本市街地を遠くに望む公園の隅に建つ玉虫のみんなの家では、深い藍色の掻き落としを選択した。甘木では対照的に、艶やかな朱色の土佐漆喰の磨き仕上げとしている。
甘木仮設団地は民有地に建つ。所有者の母屋は地震後に解体されたが、その記憶を伝えるために基礎石を再利用して擁壁をつくり、ポーチの幅いっぱいに古瓦を小端建てで積んで階段を設けた。階段は道路を挟んで建つお寺の軸線を受け止め、参道に対して山門のようにポーチを差し掛けている。みんなの家の傘を中心にして、お寺に隣接する消防屯所と共に、周辺が小さなシビックセンターのように感じられる。

 

所在地 熊本県上益城郡御船町
用途 集会所
竣工年 2017年
延床面積 39m2
構造/規模 木造 / 地上1階