grappa

2006 -

ヘタ地が持つ力

■ヘタ地
極めて狭小な三角形の「ヘタ地」に建つ小住宅である。しかも周辺は建て詰まっている。不整形な街区から、道路に接する部分を順次矩形の宅地として取っていくと、最後に奥まった使いづらい土地が余る。いわゆる「アンコ」と呼ばれる部分である。それがこの敷地である。法的に許容される最大ヴォリュームもまた、必然的に三角形となる。そこに建築を嵌め込まなければならない。どのように工夫したところで敷地形状自体から逃れることはできないが、それでもヘタ地ならではの可能性を模索しようと考えた。

■隅切り
まず「隅切り」という単純なルールによって、許容最大ヴォリュームの三角形から室内空間として使いにくい鋭角を含む3つの角を切り落とした。そして外転び、内転びあるいは「バチり」といったカットの角度を工夫することで、住空間として必要な機能に対応しようと考えた。たとえば南側の隅切りは、物干し場となるテラスに軒をかける必要から外転びとなり、西側の隅切りは、道路からの視線に対して袖壁をつくるために内転びにした上でバチらせている。東側も同様で、内部からの要求にもとづいてカットの角度を工夫したものである。さらにはクライアントが強く希望した展望台も同じく、斜線等によって規定される屋根面のヘッドカットにより確保することができた。外観に現れた不思議なフォルムは、「隅切り」という単純なルールによって生まれたものである。外壁が傾いて見えるのも、目の錯覚によるものである。

■借景
隣地はすべて矩形である。それら隣接する敷地の隅には、狭いながらも未利用のスペースが残されている。しかもそれらは敷地境界線を挟んで一カ所に集まっている。そこに隅切りによって生まれた三角形の外部空間を加えると、まとまった広さのオープンスペースが出現する。つまり開口部の外側には必ずオープンスペースが広がることになる。矩形の隣家はわざわざ敷地の隅に向かっては開口部を取らないので、結果的にそのオープンスペースを独占できてしまう。錬金術的な借景である。そして、それは三角形のヘタ地が潜在的かつ必然的に持つ力である。

■リノべーション
1層分低くなった北側隣地に面した擁壁には、既存古家のRC造地下室が嵌め込まれていた。構造耐力的に再利用は不可能だと判断されたが、予算的に解体することもできなかった。また狭い敷地の中で家族6人三世代のためのスペースを確保する必要があった。そこで、既存地下室を型枠として新しいRCを打設することにより、一回り小さい地下室を設けることにした。これも広い意味でのリノべーションだといえるであろう。その結果、実質3階建ての高さに、床下収納(将来のご主人の個室)、2段ベッドと展望台を入れて都合7枚の床を積層させている。平面のみならず、断面的にも敷地を使い尽くした感がある。

残り物には福がある。いやそれ以上かもしれない。ワインの搾りかすを集めて蒸留させて発酵させて、手間をかけてものすごく美味しいものができる。「grappa」と名づけた理由である。

所在地 兵庫県宝塚市
用途 専用住宅
竣工年 2006
延床面積 115m2
構造 木造、一部RC造
規模 地下1階、地上2階